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秋の日常


その日、ジェノは肌寒さで目を覚ました。身体を起こし両腕で肩を抱いてみると、手のひらの熱さがじんわり肩に染み込む。サイドボードの上にある水差しからグラスに水を注ぎ、寝起きの身体に潤いを与えると、煙草を咥えた。火を灯し大きく胸に吸い込むと、漸く意識がハッキリしてくる。ジェノは煙草を咥えたまま、部屋に1つしかない窓を持ち上げ開けた。

外は雨降りで、太陽は雲に覆われていた。窓の直ぐ下に見える物乾し台が寂しそうに雨に濡れている。晴れの日などは、窓の開く音で洗濯物を干しているタイクウに気付かれ、下から大声で挨拶をされる事が日常と化してしまっているので、雨の日に誰も居ないというのはなんだか寂しい気もする。

ジェノはベッドに戻り腰掛けると大きく息を吸い込んだ。煙草の味と、雨の匂いと、それに混じって鼻を擽る甘い香り。

(あぁ、この匂いは――)

元々季節の花だの風流だの、ジェノには興味のないものだった。ただ、下界に落ちてからはタイクウが色々と話をするので、それを聞いてなんとなく覚えてしまっていた。これからの季節は南瓜祭、冬になればクリスマス、年末年始に節分、春には桜で花見、雨の季節には紫陽花という青い花が咲く、夏になれば笹に願いを乗せる星祭、向日葵という花はタイクウに良く似合う、秋には月見、そしてこの金木犀という花。いくら疎いジェノでも、あの独特で強烈な香りは直ぐに覚えた。タイクウが好きな花であることも。

このロッジの周りにある木々や草花は、どうやらタイクウのチョイスらしい。一部は、元々の住人だった老夫婦の趣味らしいのだが、金木犀はタイクウがロジャーに頼んで取り寄せてもらったものだと聞いたことがある。

そんな事を考えていると、部屋にノックの音が響いた。ドアの外から声を掛けられる。

「起きてるかー? 朝飯の準備できたぞー」

「あぁ」

ジェノがそれだけ答えると、いつもの様にやや遠慮がちにドアが開けられ、ひょっこりとタイクウが顔を出す。

「おはよー、水差し持ってくな」

そう言って、やはりいつもの様にサイドボードへ移動すると、持って来た盆に水差しと使用済みのグラス、吸殻が山になっている灰皿を乗せ、エプロンのポケットから替えの灰皿を取り出し、サイドボードに置いた。

「吸い過ぎるなよ」

笑顔でそれだけ言い残すと、タイクウは部屋を出て行った。開け放たれた部屋のドアから、美味しそうな朝食の匂いが届く。

新しくなった灰皿に早速吸殻を押し付けると、ジェノは寝巻きのままタイクウの後を追うように食堂へと降りていった。

 


退魔レンのいちゃいちゃ駄文。相変わらずいちゃ度低め。(死)

なんかいつも通りの展開だよ……。

進展させたいなー、でもどうせ進展させるなら漫画だよね!?てなわけで、リハビリ頑張ります。