その日、ジェノは肌寒さで目を覚ました。身体を起こし両腕で肩を抱いてみると、手のひらの熱さがじんわり肩に染み込む。サイドボードの上にある水差しからグラスに水を注ぎ、寝起きの身体に潤いを与えると、煙草を咥えた。火を灯し大きく胸に吸い込むと、漸く意識がハッキリしてくる。ジェノは煙草を咥えたまま、部屋に1つしかない窓を持ち上げ開けた。...
◆退魔兄弟とウィルとジェノ◆ そんなに寄り道をしたつもりは無かったが、日はすっかり落ちていた。念の為にランプも持ってはいたが、空には月が煌々と輝きジェノの足元に濃く影を映している。 後ろを振り返れば、白く光るように聳える天城の塔。月明かりに照らされ上空高く雲の中へと消える塔は、まるで天界へと続く導のようだ。 「天界、か……」...
◆ジンとフリック◆ ジェノと別れテーブルに戻ってきたジンはとりあえず連中の騒ぎを治め、食事を再開した。が、箸は思うように進まない。 『満月の夜にロゼを飲むと恋が叶う』 フリックの言葉が脳裏に響く。 「恋、か……」 ポツリと零れた音は店の喧騒に飲まれて消えた。...
◆ジェノ+フリックと鬼っ子4人◆ 夕刻―― ジェノは珍しく一人で街へ出ていた。...