闇城SS


バイトも終わり、家に向かう。城之内は上着の襟元をキチンと閉じた。冷え込むようになった夜の空気が頬に冷たくて。小さく身震いをした。

ここ数日、自分でも何かがオカシイのは解っていた。皆と一緒に居る時は、空回ってみせるくらい元気なのに、独りになると全てを閉ざしたい衝動に駆られる。全てを閉ざしたいと思いながらも、人の温もりに触れたいという矛盾した心。

独りで居たら、どうにかなってしまいそうだった……。

ふと、城之内は足を止めた。回りの風景を見て苦笑が漏れる。城之内は無意識のうちに遊戯の家に向かっていた。大きく息を吐き、踵を返す。こんな時間に行っても、迷惑がかかるだけだ。こんな想いは独りで抱え込んで、仕舞い込んでしまえば良い。こんなのは、俺らしくない……。

小走りに自宅へ向かう。近道に使い慣れた公園。その広場を走り抜けようとした時、視界の端に見慣れた頭が入った。

「遊戯……?」

「?!……城之内君、どうしてココに?」

落ち付いた口調、眼に宿してる光、そして大人びた笑い。もう一人の遊戯……闇遊戯。遊戯はゆっくりと城之内に近付いた。

「お、俺は、バイトの帰りで……散歩がてら……そ、そういう遊戯こそ、何してンだよ?」

城之内は、闇遊戯の全てを見透かすような眼が苦手で、その眼がじっとこちらを見てくるのでどうも落ち付かない。さまよい続けた視線が遊戯に捕えられる。遊戯は独特の笑みを浮かべた。

「星を……星を見ていた」

 

自動販売機で暖かいココアとカフェオレを買い、2人はベンチに腰掛けた。ココアを遊戯に手渡し、カフェオレのプルトップを開ける。カフェオレを流し込みながら、城之内は視界に入った星空を眺める。 

「3000年経っていても、星空は変わらない……」

ココアを口にしながら遊戯がポツリと零す。そのオトは何だか寂しげで。城之内は闇遊戯を見た。今迄見たことのない眼差しで星空を見上げる遊戯。

その空気が哀しくて、苦しくて、切なくて、どうにかしたくて。自分の先刻迄の想いが蘇りそうで……。

城之内はどうにか話題を切り出す。

「と、ところで遊戯……その格好は?」

闇遊戯の格好は、今の時期にはまだ少し早いであろう、ダッフルコート。

「もう寝る気満々の相棒に『星が見たい』と言ったら、これを着て勝手に行け、と怒られた……」

何だか想像出きる光景なだけに、城之内は思わず吹出してしまった。遊戯も苦労してンなぁと、城之内は密かに思った。

暫く2人で星を見ていた。こういう時、星座の一つでも判ったら面白いのかな、なんて思いながら。そのプラネタリウム鑑賞会に終止符を打ったのは城之内のクシャミだった。

遊戯が城之内の肩を掴む。だいぶ冷たくなっている。

「スマナイ、城之内君……気付かなくて」

遊戯はそう言ってコートを脱いで城之内の肩に掛けてくれる。が、やはり体格の差かあまり様にならなくて。それが可笑しいはずなのに、背中から伝わる遊戯の体温が嬉しくて。何故だか涙が出てきてしまった。泣いても闇遊戯が困るだけなのに……。

どうしてコイツは、何時も一番欲しいものを与えてくれるんだろう。

 

「落ち付いたかい?」

優しく掛けられる遊戯の声に、城之内は笑顔で答えた。

「ゴメンな、遊戯……俺……」

「何も言うな、城之内君。オレは只、傍に居ただけ、それだけだ」

その『傍に居る』ってことがどれだけ嬉しいか。言おうとして、城之内はその言葉を飲み込んだ。遊戯は優しく微笑、視線を外すとポツリと呟いた。

「それに、キミの泣き顔もゆっくり鑑賞できたしな」

「!!」

真っ赤になり、言葉を失う城之内。怒ってるとも困ってるとも取れるその反応に、遊戯は気分を良くし。城之内に掠める様なキスをした。

 


言い訳は一杯ある……。

展開とか、めっちゃ御約束だし。結局馬鹿ップルっぽいオチだったし。