禁忌。
頭では解ってたはずなのに。
何故、自分は侵してしまったのだろう。
侵せばそれ相応の処罰が待っている。
――何故侵したか、など……今となっては解らない。
ただ、今意識に残っているのは『後悔』だけ。
罪を侵したのは自分。なのに、なのに――、何故あの人が裁かれなければならないんだ!?
「なんで? なんでだよ!? 俺が悪いンじゃん! なのに、何で!!」
滝川は去ろうとする善行の背中に叫んだ。善行はゆっくり振り返る。
「アナタはワタシの部下です。アナタはワタシの命令に従っただけ。総ての責任はワタシにあります」
納得が行かない。命令など受けていない。自分が誤り引き起こした事態。責任を命を持って償わなければいけないのだとしたら、償うべき命は自分の命だ。
「違う! 俺が、俺がっ――」
何かを言おうとする滝川の口を善行の手が塞ぎ、言葉を遮る。
そして、他の人に聞かれない程度の小声で話し始めた。
「アナタが連れてかれれば、命が無いのは明白です。でも、僕ならば、命を奪われる迄の処罰は受けません」
そう言った善行の眼は優しい色をしていた。
「先刻迄、こんな不公平な役職は嫌いだったんですが……。アナタを守る術の一つになるなら、それでも良いと、初めて思いましたよ」
滝川の口を押えていた手を降ろし、善行は優しく微笑んだ。善行を見詰めた侭、滝川は何も言えなかった。
「後は、頼みましたよ」
その言葉を残し、善行は滝川の前から姿を消した。
何も出来なかった自分。
悔しくて、悔しくて、悔しくて……。
気付くと皆が居て、自分が無事だった事を喜んでくれていた。
でも。
「違うんだ、違うんだ……!!」
何度も言う。自分は死ぬ筈だったんだ。本当なら、死んでいておかしくなかったんだ。
でも、あの人のお陰で……。
「コレは俺の命じゃない、あの人がくれた、あの人の命だ」
滝川はそう呟きながら、ただ泣く事しか出来なかった。
もう、戻らない人を想い――。
本当はいちゃいちゃハッピーな善滝が書きたいんじゃぁ!!